海洋温度差発電 (Ocean Thermal Energy Conversion)
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 海洋の表層部の温海水と深層部(約800m以深)の冷海水との間には約10~25℃の温度差がある。この海洋に蓄えられた熱エネルギー(海洋温度差エネルギー)を、電気エネルギーに変換する発電システムが海洋温度差発電である。海洋温度差発電は英語名を略して通称OTEC(オテック)と呼ばれている。OTECの歴史は古く、19世紀末まで遡る。今から119年前の 1881年(明治14年)、フランスのダルソンバール (J.D' Arsonval)が最初に考案したものである。その後、1973年の第一次エネルギーショックをきっかけにして、日本と米国で本格的な研究が行われるようになった。
海洋温度差エネルギーの利用可能量については、種々の調査報告が行われている1)。日本の経済水域内での海洋温度差エネルギーの総量は、1年間に1014kWhになり、仮にその1%が利用できるとすると2020年に必要とされるエネルギーの約10%に相当する。
 OTECのサイクルは、オープンサイクルとクローズドサイクルに大別される。オープンサイクルに関しては、米国が定格出力210 kWの実証実験に成功している。しかし、条件にもよるが経済性やより大きな出力の発電が可能な点で、クローズドサイクルを用いたOTECに関する研究開発の方が近年主流となっている。
サイクルの熱効率は、利用できる温度差が小さいために従来の火力発電などと比較すると原理的に低くなる。このため高性能なプレート式熱交換器の開発や新しいサイクルの発明など、近年技術開発が飛躍的に進展し、技術的には実用段階にあるといわれている。
 実証試験は、これまで100kW級に留まっていたが、1997年インド国立海洋技術研究所は佐賀大学と共に実用規模である1000kWの国際プロジェクトを開始した。2001年春に本格的な運用が開始する予定である。発電単価は、インド政府の試算によると、1000kWで20.8円/kWh(1ドル=110円換算)、50,000~100,000kWで7.5~8.7円/kWhと発表している。なお、このようなプロジェクトが、インドに留まらず韓国、台湾、南太平洋諸島など、多くの国々で進められている。
一方、OTECは電気のみならず、海水の淡水化,水素製造など多目的な利用でトータルの経済性を高める研究開発が盛んである。特に、海洋深層水の特性を活かした技術との複合化が期待されている。

 (文責:池上 康之  第4巻、第2号、2000年)

参考文献

1)近藤俶郎編著、上原春男他,"海洋エネルギー利用技術",森北出版 (1996-4).

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