海藻(marine algae, seaweed)と海草(sea grass)
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 海洋には,微小な植物プランクトンから巨大なジャイアントケルプに至るまで、大小様々な植物が生活している。このうち、大型で固着生活を営むのが海藻と海草である。
 海藻は海に生育する大型藻類で、10億年前には出現したと考えられている。花や種子をつくらず、基本的には胞子で繁殖する。緑藻(緑色植物門アオサ藻綱)、褐藻(不等毛植物門褐藻綱)、紅藻(紅色植物門紅藻綱)という3つの生物群の総称で、いずれもクロロフィルaを主色素として酸素発生型の光合成を行うが、補助色素の組成、細胞の微細構造、胞子・遊走細胞の形状などに違いがある。多くの海藻は同型または異型の世代交代を行う。
 緑藻は陸上で生活するコケ、シダおよび種子植物と類縁関係にあり、クロロフィルbを有する。アオサ、アオノリ、ミルなど約1000種が知られる。褐藻はフコキサンチンなど褐色の補助色素を有し、葉緑体が四重包膜となり、遊走細胞は両羽型とムチ型の2本鞭毛をもつ。1500種が知られ、ジャイアントケルプのほか、コンブ、カジメ、ホンダワラ類など、多年生の大型種も多い。紅藻はフィコシアニンやフィコエリスリンなど紅色の補助色素を有し、胞子や精子が鞭毛を持たない。ノリ、テングサ、トサカノリなど約5000種が知られ、生育水深帯も飛沫帯から深海(最深記録:268m)に及ぶ。これらの海藻は多少とも混生して藻場を形成し、主に岩礁・転石域の生産者として重要である。中でも多年生の大型褐藻類は海中林(ガラモ場:ホンダワラ類の場合)と呼ばれる大規模な群落を形成する。
 海草は、陸上で繁栄している種子植物の仲間(すべて単子葉類のヒルムシロ科またはトチカガミ科)、で、約50種が知られている。根、茎、葉、花の器官を有し、主に種子で増える。約1億年前に淡水域で生活していた水生植物(水草)の一部が浅海域に進出したと考えられている。代表種はアマモ、スガモ、ウミヒルモなどで、岩礁域に生えるスガモ類を除き、内湾の砂泥域で藻場(アマモ場)を形成し、生産者としての役割を担っている。
 藻場は沿岸生態系でも特に生物の種の多様性が高い。着生基質と複雑かつ静穏な空間を有し、微小な動植物も豊富であるため、多くの魚介類が産卵場や幼稚保育場として利用している。また、沿岸の浄化や寄り藻・流れ藻の供給源としても役立っている。

(文責:藤田 大介/寺脇 利信  第6巻、第1号、2002年)
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