微細藻類(microalgae)
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 藻類とは、植物のうち、陸上で繁栄しているコケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物を除いた植物のことを指し、非常に多様性に富んだ生物群である。これらの藻類のうち個体の識別に顕微鏡が必要な藻類が微細藻類と呼ばれ、浮遊性のものは植物プランクトンともいわれる。糸状体や群体を形成するもの、付着性があるものは、微細藻類であってもその集合体を肉眼で観察することができる。分類学的には広義の細菌に属する原核生物の藍藻、高等植物に近縁の緑藻、原生動物門にも分類される鞭毛藻まできわめて多義にわたっており、その数も数万種はあるといわれる。
 微細藻類は水圏の基礎生産を支えており、自然界できわめて重要な役割を担っている。自然湧昇海域では、無機の栄養塩類に富む深層水が有光層に運ばれるため植物プランクトンの現存量が大きく、植物プランクトン→動物プランクトン→大型魚類の食物連鎖の結果、海域の生産力が高いことがよく知られている。
 魚介類の種苗生産のためにも微細藻類は必須である。海産魚のふ化直後の餌料として重要な動物プランクトンであるワムシの餌料として真正眼点藻のナンノクロロプシスが、甲殻類、貝類の餌料として珪藻類のキートセロスやニッチア、ハプト藻類のパブロバなど多くの藻種が人為的に培養されている。
 微細藻類は増殖特性や藻体成分が種類によって極めて多様性に富む。光合成能が高く従属栄養でも増殖可能な緑藻クロレラ、他の生物が増殖しにくいアルカリ性や高塩分の環境下で生育できる藍藻スピルリナ、緑藻ドナリエラは産業的に生産され、健康食品、食品素材、餌料、飼料添加物としての利用が行われている。
 陸上にくみ上げられた深層水は、清浄であり、栄養塩類を多く含むため、人為的な微細藻類の培養にも有効に利用することが可能である。
 
(文責:丸山 功  第6巻、第2号、2002年)
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